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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)241号 決定

抗告人 債権者 群馬畜産加工販売農業協同組合連合会 代表者 大山福次

訴訟代理人 長谷川一雄

相手方 債務者 井上通子

主文

原決定を取り消す。

本件を東京地方裁判所に差戻す。

理由

抗告代理人は、「原決定を取り消す。抗告人の配当要求の申立を受理する。」との裁判を求め、その理由として、別紙抗告理由書記載のとおり主張した。

本件各記録に徴すると次の諸事実を認めることができる。

申請外株式会社北島商店(以下単に北島商店という)は相手方(債務者)井上通子(以下単に債務者という)に対する約束手形金債権金五百十九万円の執行を保全するため、債務者の相手方(第三債務者)有限会社双葉(以下単に第三債務者という)に対する東京都渋谷区宇田川町七十六番地の八所在の第三債務者所有の家屋について債務者から第三債務者に対する金五百万円の敷金返還請求債権(以下単に本件債権という)の仮差押命令を申請し、昭和三十二年六月十四日東京地方裁判所からその旨の決定を得、右決定正本は債務者に対し昭和三十二年六月二十二日に、第三債務者に対し同年同月十六日にそれぞれ送達された。その後北島商店は後記認定の申請外(債権者)井桁一彰、同株式会社本多商店(以下単に本多商店という)、同白子信英の本件債権の差押について、昭和三十三年三月二十日受理の書面をもって、執行力ある正本によらない配当要求として、債務者に対する昭和二十五年五月二十六日から同三十二年六月六日までの精技肉販売代金中昭和三十三年三月十三日現在における売掛残代金九百九十万九百九円(後に四百七十一万九百九円と訂正)及びこれに対する昭和三十二年七月一日(渋谷簡易裁判所昭和三十二年(ロ)第三一九号督促手続事件の支払命令正本送達の翌日)から昭和三十三年三月十三日までの年六分の損害金合計金四十一万五千八百円(後に金二十万五千二百十四円と訂正)の債権をもつて申立てをなした。北島商店の仮差押の被保全債権(約束手形金債権)は配当要求をなした右売掛金代金とともに本案訴訟が勝訴となり、その判決は昭和三十三年九月三日に確定したので、上記仮差押は本執行に移行した。井桁一彰は債務者外二名を相手方とする渋谷簡易裁判所昭和三十二年(ロ)第三六五号支払命令申立事件の執行力ある仮執行宣言附支払命令正本による元金百九十七万二千九十八円及びこれに対する昭和三十二年七月十九日から完済まで年六分の割合による損害金及び督促手続費用金六千八百五十円を請求債権として債務者の第三債務者に対する本件債権のうち金百九十七万八千九百四十八円について債権差押命令の申請をなし、その旨の決定を得、右の決定正本は債務者に対し昭和三十二年八月二十五日、第三債務者に対し同年同月二十二日それぞれ送達された。第三債務者は同年同月二十六日東京地方裁判所からの債権の認諾限度の陳述を求める催告に対して本件敷金返還債務(本件債権)は金三百五十万円の限度で認める旨の書面を東京地方裁判所に提出した。井桁一彰は昭和三十三年二月三日右差押債権についての転付命令を得、右命令は同年二月五日債務者に、同月六日第三債務者にそれぞれ送達された。本多商店は債務者外二名を相手方とする渋谷簡易裁判所昭和三十二年(ロ)第四二五号支払命令申立事件の執行力ある仮執行宣言附支払命令正本による元金百二十三万九千八百七十五円及び督促手続費用金四千三百六十円、仮執行手続費用金六百四十円を請求債権として債務者の第三債務者に対する本件債権のうち金百二十三万九千八百七十五円について債権差押命令を申請してその旨の決定を得、右の決定正本は債務者に対し昭和三十二年九月二十五日、第三債務者に対し同年同月二十六日それぞれ送達された。本多商店は昭和三十三年二月三日右差押債権について転付命令を得、右命令は同年二月五日債務者に、同月六日第三債務者にそれぞれ送達された。白子信英は債務者に対する昭和三十二年五月十八日公証人鶴比左志作成同年第九百十号金錢消費貸借公正証書により、貸付けた元金二百万円及びこれに対する昭和三十二年五月十八日から同年十二月十八日まで年六分の割合による利息金七万円を請求債権として、債務者の第三債務者に対する本件債権の内金二百万円について債権差押命令及び転付命令の申請をなしてその旨の決定を得、右の決定正本は債務者に対し昭和三十三年一月二十九日、第三債務者に対し同年同月二十七日それぞれ送達された。その後白子信英は、本件債権について既に井桁一彰の差押があり右転付命令が効力を生じないからとして、昭和三十三年二月七日取立命令の申請をなした。

第三債務者は上記認定の債権並びに転付命令の各正本の送達を受け、債権者から要求を受けたとして昭和三十三年三月十九日債務者に対する本件敷金返還債務金として金二百三十万一千円を供託し、同月二十二日東京地方裁判所にその旨届出ると共に、本件敷金返還債務額は金二百五十万円であるが、延滞賃料金十九万九千円を差引いたものであると附言した。

原裁判所は第三債務者から昭和三十三年三月二十二日右の事情届と供託書を受領したので、本件配当期日を昭和三十三年四月十一日午前十時と定め、同年三月二十五日上記各債権者に対し、催告書到達日から七日以内に計算書を提出することを命ずる催告書を発送した。上記債権者は上記請求債権を計算の上、北島商店は約束手形金債権金五百十九万円、配当要求債権中右約束手形金債権及び一部弁済金を控除した金四百七十一万九百九円とこれに対する損害金二十一万三千六百円を、井桁一彰は上記差押債権(元本、損害金、督促手続費用、仮執行宣言手続費用)合計金二百六万一千六百十四円を、本多商店は上記差押債権の売掛代金債権、損害金、督促手続費用、仮執行宣言手続費用合計金百二十八万五千二十七円を、白子信英は上記差押債権(元本、利息、損害金、本件各費用)合計金二百十三万一千八百円を、それぞれ請求債権として申出た。原裁判所は昭和三十三年四月十一日午前十時配当期日を開いたが北島商店から配当表の作成方法について異議の申立があつたので配当手続を中止した。抗告人は同年四月十九日債務者に対する別紙目録記載の債権をもつて債務名義によらない配当要求として本件配当要求の申出をなしたところ原裁判所は別紙抗告理由書記載のような理由で、これを却下した。

債務者の第三債務者に対する本件債権五百万円について、上記認定のように、債権者井桁一彰、本多商店、白子信英はそれぞれ昭和三十三年一月二十四日以降に債権転付命令を得ているけれども、債権者北島商店はこれより先昭和三十二年六月十六日右債権金五百万円全額について仮差押命令を得ているばかりでなく、外の債権者の右債権の差押が競合しているのであるから右各転付命令はその効力を生じていないといわなければならない。なお、第二番目以後の債権差押の申立及び債権差押命令の第三債務者への送達は民訴法第六二一条第一項の関係では配当要求の送達と同一と解すべきである。

債権に対する強制執行で配当要求をなし得る時期については、民訴法第六二〇条第一項で、執行力ある正本を有する債権者及び民法に従い配当要求をなし得る債権者は、差押債権者が取立をなし、その旨を執行裁判所に届出でるまでその他と規定している。それとともに他方、同法第六二一条は第三債務者が債権者から請求を受けたとき、或は配当要求の送達を受けたときは、進んでその債務額を債権者のために供託して、その事情を執行裁判所に届出でて強制執行手続から脱退することを認めている。この場合においては右供託金の上に差押の効力が残ることは勿論である。この場合、差押債権者はさらに右供託金を受領してこれを執行裁判所に届出でることを要するとの抗告人主張のような見解も存する(大判昭和二十年一月十八日民集二四巻一頁)。しかし、第三債務者からその債務額が供託せられた以上、すでに執行段階が完了しているのであるから、直ちに配当手続に着手するとしても、別になんの支障をきたさないばかりでなく、右のように差押が競合して第三債務者から債務額が供託されている場合には、差押債権者は取立命令を得ても、第三債務者に対して支払請求をなし得るかは第三債務者に権利として供託することを認めた第六二一条の規定の関係上疑問があるばかりではなく、供託金をその債権者一人に交付してそれを裁判所に第六二〇条で届出て配当手続に移ることは、却つて配当を遅延させるばかりではなく、配当金の交付の点からみても不確実になるのであるから、このような迂遠な手続を必要とする解釈に左袒することはできない。この場合第三債務者が債権者の要求、或は第六二条第一項に基いて債務額を供託してその旨の事情届が提出されたときは、差押債権者から差押債権を取立てた旨の届出があつたと同じであると解するのを相当とする。民訴法第六二七条で裁判所が事情届が提出されたときは各債権者に債権その他の計算書の提出の催告をなせと規定しているのも、右のような解釈を前提としているのである。したがつて、他の債権者の配当要求をなし得る時期は成文法上なんの根拠もない。原決定のように裁判所の右計算書提出の催告期間の最終期日までではなく、抗告人主張のように、第六二〇条によつて債権者が債権の取立をなし執行裁判所に届出でるまでと限定すべきでもなく、第三者がその差押債務額を供託して、その事情を執行裁判所に届出でたときでもあると解するのを相当とする。

しかしながら、右のように配当要求の終期は、その差押債権の全金額が取立てられ、或は第三債務者から供託されてその旨執行裁判所に届出られたものであることが原則であつて、それが一部であるときは、残額が存在していないとか、取立ができないことが客観的に確定した場合でなければならない。けだし、同一債権に対する強制執行の場合には、破産の場合の配当とは異り一部ずつ、その時の配当要求債権者に段階的に配当するということは全く予定しておらず、同一債権については配当は一回なしてそれで強制執行を完了させることとなつているのである。従つて差押債権者がその差押債権の一部を供託して、執行裁判所に事情を届出でたのみで、残部が存在しないとか、取立が不能であるということが客観的に確定していない場合には、強制執行の執行はまだ完了せず、執行が進行中の段階であるから、配当要求の終期は到来していないと解さなければならない。差押債権の一部のみが第三債務者から供託されて、その旨の届出がなされた場合にも、その一部について直ちに配当手続に着手し、その当時までの債権者に対して配当をなすとすれば、法律の認めていない時期を配当要求の終期とし、当然要求のできる他の債権者の権利を不当に害するばかりでなく、平等配当主義に徹している民事訴訟法の原則に反することになるから、とうてい許されない。

本件についてこれをみるに、上段認定のように、北島商店は債務者の第三債務者に対する本件債権は金五百万円であるとして仮差押をなし、第三債務者はその執行中である昭和三十三年八月二十六日現在において右の金額を金三百五十万円の限度において認め、その旨を執行裁判所に届出ているのである。それなのに第三債務者は供託に際して右の金額は金二百五十万円に過ぎず、そのうち金十九万九千円は延滞賃料として差引いた旨主張して、金二百三十万一千円を供託しているに止まる。しかし本件記録を精査しても、差押(北島商店の仮差押)当時の本件債権額が金五百万円ではなくして第三債務者主張のように金二百五十万円であつたとか、または債務者の第三債務者に対する延滞賃料が金十九万九千円であつたこととかについては、これを認め得る資料はなにも存しない。してみると、本件においては第三債務者は債務額の一部である金二百三十万一千円を供託し、その旨の事情届を執行裁判所に届出たにすぎないものと認める外はない。もつとも第三債務者は債権者の求めによつて供託したと届出でているので、これを確認する証拠はないが、一応第三債務者の主張のとおりと認めるを相当とする。かりにそうでないとしても、上段認定のような関係だから、右供託は配当要求の送達を受けた後のものと認めることができる。従つていずれにしても右供託は一部のものであるがその範囲では有効なものと解するを相当とする。しかし右供託は一部に止まるから、まだ強制執行の執行段階が完了せず、配当要求の終期は到来せず、抗告人のなした配当加入の申立は、その要求の許される期間内になされたものといわなければならない。

よつてこれと異る見解に立つて、抗告人の配当加入の申立を却下した原決定は失当であるから、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差戻すことを相当と認め、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村松俊夫 裁判官 伊藤顕信 裁判官 小河八十次)

(別紙)目録

一、金二百六十九万九千四百六円

昭和二十九年四月一日以降昭和三十年三月三十一日までの食肉加工品売掛代金未払債務額金九百四十四万七千円及びその債務不履行に基く約定損害金三十万円の合算額金九百七十四万七千円から、弁済のあつた合計金七百四万七千五百九十四円を控除した残額で昭和三十二年六月十二日弁済期の到来したもの

一、金三百八十二万三千三百五十九円

昭和三十二年三月一日以降同年六月九日まで食肉加工品売掛代金にして同年六月二十六日弁済期到来のもの

一、金五百四十五円

本件申立予納郵券代 金二百八十五円

本件申立日当 金二百三十円

本件申立印紙代 金三十円

抗告理由

(一) 原決定は、抗告人の前記各配当要求申立を不適法なものとして却下し、その理由として「第三債務者が民訴法第六二一条により債務額を供託したときは第六二七条により配当裁判所が各債権者に計算書を差出すべく催告したる最終期日を以つて配当要求の申立をなし得る時期としたものと解釈すべきものとなるところ、右各配当要求申立は、債権者に計算書を差出すべく催告した最終期日なる昭和三十三年四月四日より以後の同月十九日に行われたものなるが故に、時期に遅れ不適法なものである」旨の説示をしている。

(二) 然しながら、配当要求をなし得る時期についての原決定の解釈は、法の解釈を誤まる独自の見解であり、且つ、判例(昭和二十年一月十八日大審院第三民事部決定、昭和十七年(ク)第二七号配当要求事件大審院判例集二四巻一号一頁以下参照)にも反する失当のものといわなければならない。元来、配当要求をなし得る時期については、民訴法第六二〇条第一項に明文があり、同条によれば「執行力アル正本ヲ有スル債権者及ヒ民法ニ従ヒ配当ノ要求ヲ為シ得ヘキ債権者ハ差押債権者カ取立ヲ為シ其旨ヲ執行裁判所ニ届出ツルマテ又ハ執行吏カ売得金ヲ領収スルマテ配当ヲ要求スルコトヲ得」るものであるところ、前記東京地方裁判所昭和三十三年(ル)第四三号債権差押事件の債権者白子信英において差押債権の取立命令を得たけれども、その債権取立の届出がなく、反つて第三債務者が同法第六二一条の規定により債務額を供託(本件においては、債務額金五百万円のうち金二百三十万円についてのみ供託があり、残余については供託がない。その事情として第三債務者が届出ているところには虚構があり、本条による適法な供託があつたとはいえないものである。)して同年三月十九日その事情届出をしたので、ここに、「差押債権者がどの時期に債権取立をしたものと解釈すべきか」が問題となるのである。この点については、前記判例が正当に判示したように、第三債務者が同法第六二一条の規定により債務額を供託したときは、それのみでは差押債権者は未だ取立をしたとはいえず、債権差押の手続は、なお供託金について続行すべく、然して差押債権者が供託金を受領したとき始めて取立をしたと解すべきものである。これを別言すれば、差押債権者が供託金を受領しない間は、まだ取立がすまないものであり、当然に配当要求をすることができるものとしなければならない。然るに、原決定は、配当手続に移つた後に配当要求の申立があれば、強制執行における迅速なる手続の遂行を妨げる結果になるとの理由だけで、債権者に計算書を差出すべく催促した最終期日を以つて配当要求をなし得る時期を画そうとする。これは、配当手続に移つてから配当要求があつては配当表の訂正をしなければならず、面倒臭いという裁判所の事務処理の都合だけを顧慮した便宜的な解釈であり、他面には、右の如き債務額の供託があつた場合、どの時期に債権の取立があつたと同一に解すべきかについて法を探究することのない、換言すれば民訴法第六二〇条第一項、同法第六二一条の法意を無視し、且つ前記判例にも反する解釈であるといわなければならない。本件にあつては、差押債権者が未だ供託金を受領していないことは記録に徴し明らかなところである。されば、抗告人の各配当要求申立は適法であるに拘らず、原決定はこれを不適法として却下したものであつて、その失当なることは、明らかである。仍つて本抗告に及んだわけである。

抗告理由(補足)

(第一) 被差押債権の第三債務者が債務額を供託した場合において、配当要求を為し得るのはいつまでであるか、というその時期についての原決定の見解は、法探求の態度に根本的な誤まりを犯しているため、抗告申立書に指摘した如き不当な解釈となつたものと思料される。およそ、金銭債権は、特に優先弁済を認められている例外の場合を除き、すべて、互に平等なるを原則とする。従つて、債務者の財産がすべての債務を弁済することのできない場合においては、按分比例的にこれを各債権者に分与されるべきであつて、これが分与に当り、債権相互間に区別を設けないとするのが法の建前である。ただ、法律に則る強制執行として債務者の財産を分与するためには、その分与を受けるべき債権の存在並びにその内容を明確にし、且つ債権者相互間に争のないものとしておく必要上、「配当要求」なる手続を定めているにすぎない。「配当要求」も一つの手続なる以上、これを行い得る時期に関し規定を設けるのは、けだし、当然である。然しながら、この時期的制限は、債権平等なる原則の下における例外的手続上の区切りなのであるから、法律においてその制限の程度を明確にする必要のあるは、今更言うまでもなく、且つ、原則に対する例外の制度である点に鑑み、その解釈運用は厳格でなければならない筋合のものである。本件では、被差押債権の第三債務者が債務額を供託した場合において、配当要求可能の時期は、いつまでであるか、という点が問題となつているのであるが、この点に直接相応する法の規定は全くない。然し、民事訴訟法第六二〇条は、被差押債権について取立命令が発せられており、この命令に基き差押債権者が第三債務者より取立をしたという、通常の場合を想定し、「差押債権者カ取立ヲ為シ其旨ヲ執行裁判所ニ届出ツルマテ」配当要求を為し得るものと定めている。されば、本問の場合についての法を探究する態度としては、宜しく、右法条の「差押債権者カ取立ヲ執行裁判所ニ届出ツルマテ」との規定の趣旨に立脚して類推解釈すべきものでなければならない。かつて、大審院が右法条にいう「取立ヲ為シタ」と同等に解釈すべき時期はいつであるかを考え、「第三債務者カ同法(民訴訟)第六百二十一条ノ規定ニ依リ債権者ノ請求ニ因リ債務額ヲ供託シタルニ止マルトキハ差押債権者ハ未タ取立ヲ為シタリト為スコトヲ得サルハ勿論ニシテ債権差押ノ手続ハ尚供託金ニ付続行スヘク差押債権者カ供託金ヲ受領シタルトキニ於テ始メテ取立ヲ為シタリト解スヘキモノトス」と判示したのは、全く正しい法探究の態度としなければならない(昭和二十年一月十八日大審院第三民事部決定昭和十七年(ク)第二七号配当要求事件大審院判例集二四巻一号一頁以下参照)。然るに、原決定は、配当手続に移つた後に配当要求の申立を許すとすれば、強制執行における迅速なる手続の遂行を妨げるとの理由だけで、前記法条を無視し、債権者に計算書を差出すべく催告した最終期日を以つて配当要求をなし得る時期を画そうとするが、それは、法探求の態度を誤まる不当な解釈というのは外はない。

(第二) 本件における配当要求可能の時期は「差押債権者が供託金を受領したとき」までであると、抗告人は主張する。右の主張は、前記判例の示す解釈と同一であり、法の規定の趣旨に最も合致する見解と信ずる。

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